2016-01-01から1年間の記事一覧
有用なものではない普遍性というのは、言い換えれば「無償」ということだと思います。「有用性」は何かの役に立つこと、「無償性」はなんの役にも立たないことです。「普遍性」というのは世界中の誰でも納得する正しさです。自然を相手にしても社会を相手に…
これは吉本の過ごした佃島のあたりの光景でしょう。海があって、夕暮れがくる。誰にもふるさとがあって、その情景がこころの奥のイメージを決定づけているといえるんでしょう。わたしは文京区の山の手と下町の中間のような町に育ち、文京区特有の東大から漂…
建築というものは抽象的なものだということでしょうね。人類の最初の頃は、自然のなかで寝起きしていたんだと思います。穴倉とか樹の上とか。それがしだいに自然を加工した板とか柱とかで家を作ることになるんでしょう。もうそこには自然そのものから切り離…
常緑樹というのはいつもはっぱをつけている樹でしょうね。それでは季節を感じにくいから、冬には枯れて、春には芽をだすような樹がふさわしいと、なかなか細かいことを言っています。たぶんこのころ思考の抽象作用のなかに埋没していた吉本にとって、自然と…
これはずいぶん思いあがったことを言っちゃったなという感じですね。しかしこういうことを書く理由はわかる気がします。吉本に限りませんが、詩を書こうという人は最初は模倣から始めるんですね。熱心は人はそれこそ自分の尊敬する先達である詩人の詩を書き…
寂寥といわずに「孤独感」といえば、孤独感は社会に対する強い批判意識からやってくるといえます。批判意識の薄いやつは社会のなかを泳ぐことができます。やあやあ、どうもどうもといいながら。しかし批判意識があればつきあう相手を選ぶし、めんどくさい、…
吉本がいう思考の演習というのは、たとえば「女性の美しさ」というような任意の命題を最初にもってくるとして、その命題を抽象化して考えて、さらに抽象化して、次には具体化して、さらに具体化するというような論理的思考の体操のようなことをすることです…
これは思考ということ自体に凝って、思考の跳躍というものがなぜどのように行われるのかを注視しているにんげんの記述です。やはりこれも幻想論につながるものだと思います。思考の跳躍は幻想と幻想の間の跳躍だとも考えられるからです。 おまけありません。
これは若い時に読んだときにわかったようなわからないような印象でしたが、今読んでもわかったようなわからないような感じになります。確かに激しい愛憎とか悲しみはやがて薄れていくものだと思います。その理由はわたしが思うには、嫌悪というのは対象への…
これもいかにも吉本らしい記述です。面白いと思いますが、だからどうということも特にありません。これは自分の思考とか感情とかを自分の論理で押さえたいという執念のある人が書くことです。 おまけありません。
自由というものを人間にとっての自由と考えれば、それは人間の人間的な欲求を充たすものということになりましょう。人間的な欲求を人間の本能と言い直せば、自由は人間的な本能が規定するわけです。人間的な本能は動物的な本能を基底にして、そこに人間的な…
人間の人間的な本能に社会が規定されるならば、生理学とか生物学が人間の本能を追求するのだから、社会学も経済学も生理学、生物学に規定されるということを言っているわけです。こうした学問の枠を超えた追求の姿勢が、人類の歴史を胎児期の人間のあり方に…
これだけ読んでもなんのことやらわかりませんよね。わからなくて当然だと思いま す。ひとつの悲しみとは何なのか。ひとつの予望って何なのか。唯ひとつのことって 何なのか。赦された者ってどういうことか、「さっぱりわからない」(BY福山雅 治)吉本らし…
唯ひとつの可能って何?それは言わないわけですよ。ああアレだろうな、と思えばつ まりたぶんソレだろうねということです。なんでも言えば済むわけじゃない。言わな い言葉、言えない言葉を聞くという、それが大衆の無言のことばを聴くということで もあるん…
動機、つまりこうしたいとかこう生きたいというような動機があって人は行動する。つまり実践する。しかし現実とぶつかって最初にこうしたいと思ったような結果にはならないものだと吉本は述べています。現実のほうから働きかけてくる力があって、その力と動…
このたった一つのことを信じ込むということの怖ろしさは、キリスト教だけでなくマルクス主義でも同様だということが初期ノート以降の歴史でも証明されたのだと思います。権力と貪らん、あるいはスケベとか不倫とかいじめとか、男女とか集団内での愛憎のすさ…
あけましておめでとうございます。今年もつたない解説をしていきますので、よろしくお願いいたします。さてこの初期ノートの文章ですが、あなたならあなたの個人としての運命を社会的な面からだけ確定することはできないということを言っていると思います。…
こうした考え方の出どころはたぶん小林秀雄の宿命論だと思います。個人にはすべて自己資質という根深い「宿命」があり、それを見出すのが批評なので、それには批評家自身の自己資質または「宿命」の発見が前提とされるという考察です。吉本はさらにその宿命…