2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

抑圧に加へるに抑圧。僕の脳細胞が破壊すれば、僕はそれを勝利と呼ばざるを得ない。(原理の照明)

これはそんなに解説することがないですね。限界まで考え抜こうということです。限界を極端に想定すれば脳細胞が壊れるまで、ということで、そこまでやれば勝利といったっていいんだという若者らしいことが述べられています。実際はよく考える人より、考えな…

この精神の単調を練りかためることにより僕は何を獲得するか。(原理の照明)

吉本が獲得したのは原理だと思います。それは精神の疾患ぎりぎりの苦しみを介して到達したもので、その耐え方はヴェイユに通じるものがある気がします。おまけ ありません。

美学から歴史を拒否することは長い間僕の主題であつた。僕には存在の根底にある伝習といふものは現在的な意味のうちに消失すべきものと思はれた。若し望むならば、すべて歴史的なものは現在的な論理と解析のうちに尽すことが出来ると信じられた。僕は論理の力を信じてゐたし、論理の持つ普遍性よりも論理の含む浸透性を、好んだ。(〈老人と少女のゐる説話〉Ⅵ)

これは分かりにくい文章ですね。美学から歴史を拒否するって。そもそも美学って何?すべて歴史的なものは現在的な論理と解析のうちに尽くすことができる、というのもよく分からない。要するに現在の文化の先端にある思想や論理で、歴史を論理づけるべきだと…

夕ぐれがくると僕は理性のかげにかくれてゐる情感を放した。情感はひそかに理性の手をはなれて自らの影を拡大するやうだ。僕は鋳型をうちこはして融解するようにすべての規律をも放すのだ。《一九五○・四・三○》(〈夕ぐれと夜との言葉〉)

大庭みなことの対談で、吉本は否定に否定を繰り返した帰り道で他者を許すことができなくてはならないというようなことを言っています。大庭みなこが、その言葉は胸に刺さりますね、と言っていたように私のこころにも刺さります。夕暮れになると吉本は情感を…