批評家は論理が個性と出遭ふまで待つてゐるべきだ。それ以前に表現されることはすべて生のままの素材にすぎない。如何に多いことか。市場は彼ら似非批評家で黒山だ。(原理の照明)

こうした考え方の出どころはたぶん小林秀雄の宿命論だと思います。個人にはすべて自己資質という根深い「宿命」があり、それを見出すのが批評なので、それには批評家自身の自己資質または「宿命」の発見が前提とされるという考察です。吉本はさらにその宿命論を徹底的に原理的に解析したいと考えていると思います。それは小林が正面切ってはぶつかることのなかった社会現実というものに吉本はぶつからざるをえないものを持っているからです。

おまけはありません。