2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の存在は何かにむかつて無限の抑圧を感じてゐる。僕は、どうしてもそれを逃れることは出来ない。存在は外的な現実の歪みを感じてゐる。あの歪みのむかふ側に自由があるのだ。あの歪みは無数の観念の亡霊をその周辺に集めてゐる。るゐるゐたる屍体の群、血の抑圧、しかも一様に傷つきはてた者たちは僕のやうに困迷してゐる。僕はその突破口をすすんでゆかねばならない。(原理の照明)

これは具体的には何を言っているのが分かりにくいですね。無限の抑圧を若き吉本に感じさせている「何か」ってなに?よくわかんないけど、その「何か」は現実の歪みの中心、ブラックホールみたいな感じで、「無数の観念の亡霊」をその周辺に集めている。亡霊…

すでに僕は知つてゐるのだ。神は僕を決して救はないだらうと。僕は自らの力を何ものかから引離さなければならない。それを分離しなければならない。(原理の照明)

自分が無意識に前提にしている観念から自分を引きはがすのはとても難しいものです。それを可能にするのは「あれ?」とか「おや?」というかすかな異和感の気づきです。その気づきもまた無意識の信じ込みで埋め込まれていきます。でもまた「あれ?」と思う。…

僕は度々正義の味方になることを強制せられた。だが僕には常に一つの抑制があつて、正義といふような曖昧なものに与することを願はなかつた。それはひとつの知心とも言ふべきもので、僕が何を欲するかといふことを通じて、人間が如何なるものかを知らうとする心があつた。そして最も主要なるものは最もかくされてゐることを信じてゐた。(科学者の道)

ここで正義というものを曖昧なものと思わず正義の味方になってしまうとどうなるのか。それは「正義」という共同的な理念の陰に、自分の個人の心が隠れてしまうことになると思います。だから「自分が何を欲するか」とか、「人間が如何なるものか」というよう…

衰弱した精神にとつては休息が必要なのだ。それなのに僕はいつも酷使してゐる。すると増々肉体と精神とが不均衡になつてゆくのが判る。脳髄は敏感に衰弱し肉体はしこりのやうに悩む。僕は増々自分を窮地に追ひ込んでゆくようだ。(忘却の価値について)

まあ二十代の青年の吉本にこういうことを言われてもね・・・60歳を超えちゃうと、肉体が精神のセンサーだということがよくわかる。歯が抜ける、耳が遠くなる、目が衰える、そういったことは世界への通路が詰まっちゃうことなんですよ。しかし人の心身は不…