2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「神話のすべての特質のうち、何れの神話も持つひとつの性格、それは象徴性といふことだ。神話の象徴性とは、その原始性の産物であり、同時に述語的にはその単純性の産物である。象徴とは常にその原因を向ふ側にもつものでなく、こちら側に持つものであり、それが単純なるものは、象徴的であることの必要且つ充分な証明となるだらう。」(原理の照明)

ここで吉本が神話について考えているのは、やはり天皇について解明したいからだと思います。戦時中吉本は天皇を信じていた。それが生き神様だということを信じていたし、天皇を中心とした秩序を信じていたし、天皇の掲げる戦争の大義を信じていた。ところが…

「それ故、神話の科学的な解明なるものは、すべて無意識の心理学的分析に還元せられざるを得ない。さもなくば、それは考古学の問題に外ならないであらうから。」(原理の照明)

単純で原始的な神話の象徴性というものは何故高度な知識人から庶民の人々までを引っさらう力があるのか。それは無意識に関わるからだ。原始から形成されてきた人類の無意識の分析に還元する、つまりそこに分析を集中させなければ解明できない。現代の人間の…

「戦後世代の特質とは、言ふまでもなく、希望の放棄の中にある。希望の放棄…。放棄といふことのなかには、あの狡猾な前世代への信頼の放棄がある。」(形而上学ニツイテノNOTE)

希望を棄てたということは誰かがこの世の中を良くしてくれるだろうという希望を棄てたということだと思います。戦争中は吉本は日本の軍部や政府を信じ、この戦争をやることで日本やアジアが良くなるという希望を持っていたでしょう。しかしその戦争は負けた…

「民衆の最も重要な部分のひとは、社会的無関心を以て、社会的悲惨のなかに陥ちこんでゐる。芸術家と思想家の最も重要な部分のひとは、二千年以来の社会的無関心によって、相も変はらず、楽天的手仕事と切り口上を繰り返へしてゐるに過ぎない。」(中世との共在)

民衆の最も重要な部分の人とは最も民衆の本質的な暮らし方をしている人、つまりちょっと文化的なことや政治的なことにも首をつっこんでいるような人でなくて、生活圏をあまり出ることなく毎日毎日の生活を繰り返して生きている大衆の原像に近い人というよう…