2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の精神からは希望が消失した。僕はいま無限の単調のうちにある。そして僕が自ら血肉化し得たのは衝動(感情)を知性によつて抑へること。いやむしろ虚無によつて抑圧することであつた。この感覚は言はば論理の錘(おもり)を沈めるようなものであつた。(原理の証明)

なぜ希望が消失した、と言っているかというと、敗戦によってそれまで信じていた軍国主義の思想が完全に破産したのを見たからです。そして戦後になって民主主義や社会主義を提唱しはじめた人たちの主張のなかに、吉本たちが戦争を体験して味わった絶望が充分…

僕は神の問題から逃れ得た(やうに思ふ)。言いかへれば僕にとつてそれは情感の問題から逃れたことを意味する。何故ならば、僕はスコラ哲学の教祖たちのやうに、理性と神とを一致させることには与(くみ・賛成して仲間になるの意)しなかつたから。(原理の証明)

吉本にとっての神という問題は、いつかは戦争によって死ぬと信じられた自分の宿命に対して、絶対者として解答してくれる存在だったと思います。俺は戦争でどうせ死ぬ。若くして戦争で命を失うのはなんのためか。なんのためと思えば命と引き換えにできるのか…

資本制社会は競争を激化し、人間をして憩はしめないだらう。資本制社会の真の基礎は、優越、権威、競争の心理である。(原理の照明)

資本制社会が競争を激化するというのは、資本制社会が自由競争を原則とするということですが、それは初期の資本制のあり方で現在はそこから大きく変貌しています。現在も資本制社会であり、企業間の競争というものは存在しますが、大きくとらえれば圧倒的な…

且て存在した天才といふもの。僕の考へによればそれは特殊な巨大な才能を有する人を指すのでなく、速やかに自らに出会つた人を指す。優れた天賦の才能などは居ない。僕には各人は自らの限界を夫々持つてゐるように思はれる。この固有な限界を宿命と呼ばう。それ故、天才とは巨大な限界を有するものではなくて、僕によれば、深化された限界を有する者だ。深化された宿命、これを天才と呼ぶ。(原理の照明)

支配したり管理したりするのが大好きな連中の思想のなかにあるのは、自分たち支配者の優越性への確信じゃないかと思います。あるいは決定的に優越した主人に仕えるしか人生はありえないという子分の確信です。能力というものが先天的に決まっていて、その証…