2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

芸術は閉ぢられてはならない。何故ならそれは滅亡であるから。(〈方法について〉)

日本の戦争期にもたくさん優れた芸術家はいたわけです。優れた知識人もいた。その人たちがすべて戦争翼賛に吸収されていった。芸術的才能も国際的な知識も国家の推し進める戦争に腹の底から掬い取られていった。それを吉本は嫌というほど知っているわけです…

限界なきところにあつて織る夢。(原理の照明)

もう俺だって59歳だから限界ありますよ。俺のような還暦のあたりの人を「アラカン」っていうんだそうだ。「アラフォー」のバリエーションとして。アラカンかあ。嵐勘十郎みたいって、そんな名前が浮かぶあたりがすでに「アラカン」。ま、いいか。吉本の晩年…

やがて痛手は何かを創造するであらう。自然のやうに人間は抑圧をエネルギーに化するものだ。(原理の照明)

この初期ノートの部分、心の傷はやがて現実に対するたたかいのバネとなるという考えはこの頃の吉本の文章によく出てくるものです。この考えには科学の徒である吉本の特色があらわれていると思います。こころをエネルギーと考えれば、抑圧はやがてどこかにエ…

暗澹たる道で僕はもう何も感じられなくなつた精神を歩ませてゐる。行き遇ふ者達は未知らぬものばかりだ。(原理の照明)

「母型論」のなかの「病気論」に、「病気のばあいの基本的な型は、外界の現実にたいして感覚系の働きがすべて撤退してしまい、その代わりに内臓系の心の働きの分野に新しい架空の現実をつくっている状態にたとえられる」という文章があります。精神の異常と…