2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「虚無からは何も生むことが出来ない。僕はこれを熟知するためにどんなに長く一所に滞ってゐたか!僕は再び出発する。それは何かをすることだ。この世で為すに値しない何物もないように、為すに値する何物もない。それで僕は何かを為せばよいのだと考へる」(エリアンの感想の断片)

今の仕事や勉強や生活が不満で、もっと別の生き方があるんじゃないか。自分が本当にしたいことがどっかにあるんじゃないか。そういう思いに襲われることは誰にもあると思います。吉本もまたそのように自分が本当にしたいことは何だろうと考えたのだと思いま…

「帝王はいまも神権につながれてゐる。あの荘厳で無稽(むけい)な戴冠式や即位式。それから支配者の位置につくものが僧侶の前で宣誓する風習。神権と王権。立法と行政とが、神と帝王から離れて民衆の手に移されるのは何日のことか」(エリアンの感想の断片)

宗教から地上の掟である法が分離して国家を生み出していくとすると、宗教と法にはへその緒のようなものが残ります。そのへその緒が切れるときが立法と行政が民衆の手に移るときです。それは立法と行政、いわば共同体のルールというものから一切の権威付けと…

「戦争に介入してはならぬ。そして僕の抵抗の基盤は、僕の畏敬する多くの人たちが死ぬのが堪えられないからだ。そして僕の軽蔑する人たちは、戦争が来やうと平和が来ようといつも無傷なのだ」(風の章)

戦争というのは吉本にとってただの言葉でも概念でもなく、自分の命を賭け、周囲の近親や友人が命を失った体験です。つまり触れれば血の噴き出る言葉です。もう戦争はごめんだ、戦争だけは嫌だ、戦争っていうのは最低だ、ひどいもんだ、それが敗戦当時の多く…

「社会は最早、無数の秩序ない抑圧の集積だ。居場所を喪った僕の魂は遥かな地下を歩いてゐる」(形而上学ニツイテノNOTE)

世の中はムカつくことだらけ。もう引きこもるしか魂を守る手がねーよ。現代訳すればそんな感じでしょう。おまけです。田原先生は照れくさいかもしれないけど、吉本が田原先生の著作「初期・性格と心の世界」に対して贈った言葉です。たしかいわゆる本の腰巻…