2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

方法なき芸術は発展なき芸術である。(〈方法について〉)

うまく説明できるかわかんないんですが、たとえば戦後詩ってものがあるでしょ。たとえば「荒地派」っていう詩の集団があって吉本もそこに属していたわけです。荒地派の総帥っていうか、代表的な詩人はまあ鮎川信夫だってことになります。鮎川と吉本は三浦和…

方法は純化せられたる選択である。(〈方法について〉)

純化されたというのは自分のなかで抽象化されたということじゃないかと思います。選択というのは言葉の選択であれ対象の選択であれ選択の連続として表現は行われます。なぜここでこの言葉を使うのか、この場面を描くのはなぜか、なぜあの場面ではないのか。…

若しも僕が社会を構成してゐる思惟の錯綜を再現することを願ふならば、社会は金網の積みあげられた山のやうに視えるだらう。到るところで身をからまれる者が在るかと思へば、或る者は何くはぬ顔をして網の目の端を引張つてゐる。(〈夕ぐれと夜との言葉〉)

これはあまり解説の必要がないと思います。社会というものを内面として視て、錯綜する思考の山のように見たらどうなるかということを言っているわけです。これに時間軸を加えれば、内面としての歴史ということになるわけです。社会を内面として視れば支配的…

異常な個性がたどる異常な運命――それは人性的な原則に外ならない。誰もそれをどうすることも出来ないものだ。(〈少年と少女へのノート〉)

これは吉本自身のことを言っているんじゃないかと思います。吉本という人はふつうの生活人の生活を目指して暮らしていた人です。また両親も生育した下町の環境もふつうのものであり、その戦中戦後の学歴、就職歴、組合運動の履歴なども当時の若者としてあり…