2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「(カール・マルクスの資本論について)僕はこの極めて抽象的であり、同時に原理的である論理の発展法が、僕の思考の原則に一致するように思はれた」(カール・マルクス小影)

この初期ノートの文章の前に書かれていることは、マルクスの思想の多くの間違いがあったとしても、逆に完全に間違いがなかったとしても、それは自分(吉本)にとって重要ではないという文章です。ではなにが重要だったのか。それが続きのこの文章になります…

「殊にいささかでも、自らの精神について何らかの苦闘を経て来た者は誰もが、思想といふものが如何にして形成され、如何にして発展せられるかを知ってゐるだらうし、そうすれば、幼稚な無関心でもって、思想と人間、現実と理論との必然的な関連や、微妙な断層を等閑に付することはしないであらう、と思はれた」(カール・マルクス小影)

思想というものはなんらかの形で人が個に追いやられ、追いやられた孤独の中で自分にとっての世界を回復しようとするものだと思います。だから個に追いやられたというのがいわば思想の出生の秘密であって、その哀しさというものが思想にはつきまといます。そ…