2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

批評における判断力の強弱は、単元的な判断の連鎖の持続度の強弱としてあらはれる。(〈批評の原則についての註〉)

吉本がどこで書いていたのか思い出せませんが、マルクスについて、普通の人なら数分とか数十分とかしか持続することに耐えられない思考を、何時間も何日も持続して考えに考えることができる、それがマルクスだというようなことを書いていたと思います。プロ…

〈出来るだけ易しい言葉を用ひること。〉(断想Ⅲ)

「できるだけやさしい言葉を用いること」というのは、吉本がひそかに苦闘した大きな課題だったと思います。そこ奥には、吉本が人と、特に女性とコミュニケーションが取りにくいという生涯の体験があったと思います。そんな吉本家に吉本以外は女性と猫しかい…

それで人間は虚無のうちにのみ存在すると言ふことが出来る。(下町)

「それで」というのはどういうことかというと、私の考えでは信じるということができないということだと思います。吉本は敗戦によって信じるものがなくなったということじゃないでしょうか。あるいは信じるということ自体に疑問が湧いたということです。現実…

〈おまへは自分を信ずるのだよ。あんまり痛ましい程自分がなさすぎる。〉(下町)

この「おまへ」は吉本のことでしょう。では誰が吉本に「自分がなさすぎる」と言っているのかといえば、それはこれは創作だと思いますから自分が自分に言っているといってもいいわけですが、私が想像するにはたぶん吉本の物語詩に出てくるイザベル・オト先生…