2016-03-26から1日間の記事一覧

僕は思考の演習がもたらす効果を知つてゐるわけではなく、そうすることによつて効果を実験し得ると考へてゐるのみである。如何なる作家も作品形成における秘事を明らかにしたことはなく、唯彼等は結果だけを提示したにすぎない。一つの結果である作品から、一つの過程である生成の秘事を発見することは容易ではない。(断想Ⅱ)

吉本がいう思考の演習というのは、たとえば「女性の美しさ」というような任意の命題を最初にもってくるとして、その命題を抽象化して考えて、さらに抽象化して、次には具体化して、さらに具体化するというような論理的思考の体操のようなことをすることです…

注意深く演習することによつて僕が期待する唯一の効果は、一つの段階が終つて他の段階に移るといふことが果して可能であるか、(一般にそれは同時に行はれるから)を検討し得るといふことにある。(断想Ⅱ)

これは思考ということ自体に凝って、思考の跳躍というものがなぜどのように行われるのかを注視しているにんげんの記述です。やはりこれも幻想論につながるものだと思います。思考の跳躍は幻想と幻想の間の跳躍だとも考えられるからです。 おまけありません。