2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

且て関心を示すところのなかつたものが、いまは激しい関心をそそる。このことは、われわれの精神力学の特質を暗示してゐる。即ち精神がひとつの対象を把握する操作は収斂作用である。精神のひとつの収斂によつて同時にひとつの対象が把握されるのみである。(〈詩集序文のためのノート〉)

かって関心を示さなかったものが、いまは激しい関心をそそるというのは、たとえば吉本の場合、世界認識の方法、具体的にいえばヘーゲルやマルクスのドイツ系の思想だと思います。ではかって関心を示したもの、というのは日本帝国の軍部が流布してきた東亜解…

我々は存在そのものが既に倫理的な実体であることを知る。(断想Ⅳ)

倫理という言葉は分かりにくいですよね。じゃあ精神があるということがイコール倫理だということなのか。だったらあえて倫理といわずに精神といえばいいじゃねえか。しかしたぶんわたしが思うには、倫理というのは精神の矛盾という要素があると思います。そ…

このいら立たしさは何処から来るか。人は絶えず自らの為すべきことを持つてゐる。(断想Ⅰ)

自らの為すべきことを持っている、というのは「仕事」ということだと思います。何度か書きましたが、「仕事」という吉本の言葉は生活費になる仕事ということを必ずしも意味しないと思います。つまり金にならなくても、どうしてもやりたいことがあればそれが…

AがAでなくなるときに残すひとつの空白。(断想Ⅰ)

これはなにを言ってるのかわかりませんね。わかるほうがおかしいぜって感じ。 無理に解釈すれば、自分のアイデンティティを失って、別の思想に移っていくときに、そこにはすんなりといかないこだわりがあるってことかと思います。敗戦後の吉本は、もはや戦中…