2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「戦争は、常にすべてのものを単純化せしめる。経済、道徳、思想……。」(原理の照明)

戦争が経済や道徳や思想などを単純化せしめる、ということは言い方を変えると、戦争という集団の目的が、個人個人で千差万別であるべき生活や行動や思考を規制して集団の目的に従わせた、ということです。お国のため、陛下のため、戦地の兵隊さんのため、と…

「倫理性とは、精神の単純化の所産である」(原理の照明)

ここで倫理性と言っているのは、集団化された倫理性、言い換えればいわゆる道徳というものだと思います。人間の精神の本質としても倫理という概念を使うのでまぎらわしいですが、そういう根底的な倫理のことを指しているのではないでしょう。戦争のような悲…

「ともすれば病理学が僕の苦悩のうちに入りこんできておびやかしたり、卑怯な振舞を僕に強ひたりする」(エリアンの感想の断片)

ここで病理学と言っているのは精神の病理学だと思います。つまり自分が苦しんで考えている時に、精神病についての知識が、俺はうつ病ではないかとか、分裂病ではないかと不安にさせるということを言っているのでしょう。「卑怯な振舞」とは何かよく分かりま…

「僕は、自分が狂人であることを病理学的に承認してはならない。それは、僕自身に対する敗失であり、あの長かった人間の精神史に対しての、僕の冒涜(ぼうとく)でもある」(エリアンの感想の断片)

これは「エリアンの手記と詩」という吉本隆明の長い詩の一部分です。―― ― ない>― ― つける>― ―― ― から>―このエリアンというのは吉本の自画像を託した物語詩の主人公です。このエリアン自身のこの世に生きられないという思いは、吉本が自分に感じていた思い…