2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「僕はすべてを抽象に翻訳しようとしてゐる」(断想Ⅰ)

すべてというのは現実ということですね。現実の現象を抽象した概念で捉えようとしているということを言っているわけです。現実というものは様々な要素の混沌としたものですから、それをある思考の方法によって抽象化して抽象化した概念の器に盛るわけです。…

「ヨオロッパは精神の課題を第一義と出来るに反し、アジアは現実の課題を第一義となすべきである」(断想Ⅱ)

アジアというのは要するに農業の中心の世界です。そして西欧とは工業中心の世界としてアジアを支配しようとしてやってきた世界です。そしてアジアは農業から工業へとその生産と経済を移していきます。脱亜であり入欧です。その最先端の優等生が日本です。こ…

「1950年代に入り、自殺者相継ぐ。プロレタリアートの貧困、中産階級の窮迫は急。電産、金鉱連、ストに入る」(序章)

これは当時の世相であって、書いてあるまんまですね。敗戦後5年経ったあたりの日本の社会の姿を書いているわけです。空爆で主要都市が叩き潰され、働き手が戦地で大量に亡くなっていますから、経済状態がいいわけがない。焼け跡の世界です。 そうした中で吉…

「コミニスト、ファシスト共に民族の独立を主張す。エリアンこれに不信。祖国のために決して立たず。人類のため、強ひて言へば、人類における貧しいひとびとのため」(序章)

社会主義を標榜するイデオロギーも、民族主義を標榜するイデオロギーも、ともに祖国のためという国家主義を超えられない。では貧しい人たちの側に立つという貧民の側主義は希望なのか。その吉本の当時の決意は、多くの現実と観念の津波をくぐりぬけていきま…