2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

分化せられた社会機構における精神の本能的な防衛力として、近代は組織を有つに至つた。(断想Ⅷ)

これは何を言いたいのか私にはよくわかりませんが、近代になると社会機構は分化するということがあります。近代以前では、第一次産業つまり自然に対する農業や漁業や牧畜が主体だったわけです。それも産業としては分化してはいますが、近代以後の第二次産業…

われわれの精神はその方法を組織のためにではなく、組織の根底に対して使駆すべき理由をもつてゐたはずである。(断想Ⅷ)

組織の根底というのがなにかはわかりませんが、おそらく吉本は後年「共同幻想論」に結晶する幻想論の構想をもっていたのではないでしょうか。吉本は個にこだわって、個の根拠を掘りぬいてくれた人です。だから吉本を読んだ人の個である部分はずいぶん救済さ…

風は今日、冷たい。雲のありさまも乱れてゐる。僕は少年の時、こんな日何をしてゐただらう。街の片隅で僕ははつきりと幼い孤独を思ひ起すことが出来る。執念のある世界のやうに少年たちの間では事件があつた。その中で身を処すときの苦痛は、今と少しも変つたものではなかつた。(〈春の嵐〉)

吉本は幼年期とか少年期の記憶を何度も掘り返し、そこから思想の糧を引き出してくる思想家です。ふりかえって私たちはどうでしょう。私は自分のあまりぱっとしたものではなかった幼少年期を繰り返し思い出すということは少ないです。それってなんかきついん…

春の嵐。僕は何も象徴することは出来ないが、その苦痛だけは知つてゐる。(〈春の嵐〉)

「春の嵐」というのは思春期のことを言っているんだと思います。思春期に少年から大人に変わる〜という徳永英明の歌のような時期ですね。体が性にめざめるから「嵐」っていうわけですね。小中高の学生のころでしょう。吉本の少年期は、次のおまけに引用した…