2016-01-11から1日間の記事一覧

且て個性の運命を社会学的に解析し得たものはない。否これは解析することは不可能だ。だが解決した者は在る。如何にして?それは行為といふ単純で重たいものによつて。ここでも人は現実といふ魔物に出会ふ。(原理の照明)

あけましておめでとうございます。今年もつたない解説をしていきますので、よろしくお願いいたします。さてこの初期ノートの文章ですが、あなたならあなたの個人としての運命を社会的な面からだけ確定することはできないということを言っていると思います。…

批評家は論理が個性と出遭ふまで待つてゐるべきだ。それ以前に表現されることはすべて生のままの素材にすぎない。如何に多いことか。市場は彼ら似非批評家で黒山だ。(原理の照明)

こうした考え方の出どころはたぶん小林秀雄の宿命論だと思います。個人にはすべて自己資質という根深い「宿命」があり、それを見出すのが批評なので、それには批評家自身の自己資質または「宿命」の発見が前提とされるという考察です。吉本はさらにその宿命…