2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

〈いま幸福?〉〈否!〉〈諾!〉そんな会話はあるものではない。それはなぐさめといふものだらう。悲しみを知つてゐる精神だけがよくなぐさめといふことを知つてゐる。(〈夕ぐれと夜の言葉〉)

「幸せかい?幸せよ(^―^)」という会話はありえないと吉本は言っているわけです。幸せなんてなんだかわからない。悲しみならわかる。「幸せだなあ、ボクはキミといるときが一番幸せなんだ(BY加山雄三)」というような会話は理解不能だということです。こう…

一つの秩序は必然的に一つの思想的体系を要求する。秩序は支配する者にとつて一つの自然であるが、被支配者にとつては巧まれたる体系に外ならない。(秩序の構造)

現今の話題であるTTPという関税撤廃同盟の推進といったものは、世界秩序を支配するアメリカという世界覇権国にとっての政治的思想的体系の一環です。それはアメリカやアメリカに支配された日本の官僚組織や野田首相をかついだ民主党一派にとって一つの自…

人はしばしば模倣の上に乗つて、かの青春期を出発致します。そして何日か自分が見知らぬ地点で、視むきもされないで置き去りにされるのを発見するのです。そのときこそ、真にある物を理解するとは、その物を原点からはじめることであるのを知るでせう。敢くて彼は、独りして、貧弱な自分から出発し直すのです。僕にはそれが一九四九年中頃に始まりました。(原理の照明)

ここに書かれていることは吉本が敗戦という体験を経て、戦中に自分が形成した日本と世界の社会観を組み替えていかなくてはならないと感じた時に、もはや頼るべき思想がこの世界のどこかに用意されていると期待することはやめようと考えたということだと思い…

明瞭に言ひ得ることは人間の精神の作用が、その生理に全面的に依存してゐるといふことである。だがこれは少しも精神について解決であることを意味しない。(原理の照明)

それは全面的に依存している、といわなければいいんだと思います。あるいは生理から精神の作用が分離することに論理を与えるしかない。そしてそれはこのノートを書いた後の吉本が自らやりとげてみせていることです。「昨日の我に今日は勝つ」(BY 美空ひば…