2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「人間には確かに語らない部分がある。人間が精神と呼んでゐるものは、恐らくはその語らない部分から成り立ってゐる。」(原理の照明)

これは言葉について語っています。吉本は言葉、あるいは言語をそれが発せられた結果としての文章や録音されたしゃべり言葉だけで捉えるのではなく、言葉がひとりの人間の内から生まれようとする場面で捉えようとします。これがそれ以前の言語論と吉本の「言…

「虐げられた者の持つ狡猾さを女性も亦(また)持つてゐる。人類史はその胎内に女性史を持つてゐる。胎内にといふことは重要だ。誰がこの歴史を修正するか?」(原理の照明)

信じてはだまされ、いいように使われ、いらなくなれば捨てられる。そういう虐げられる立場を何百年も続けてくれば狡猾さを身に着けるようになります。そしていったん虐げられた立場の人間たちが力を身につけた時には、その耐え忍んで身に着けた知恵と戦術に…

「今日、あらゆる思想家の所論にもかかはらず精神の危機は存在しない。むしろ、精神は苦悩する希望のうちにあること、やがて歴史はそれを証明するだらう。絶望とはあの倫理の匂ひ濃き希望の別名である。」(原理の照明)

これは吉本が若くて気張っているので文章として分かりにくいですが、たぶん吉本が初期ノートを書いていた敗戦直後の時期に「精神の危機」というものを主張する論調が多かったんだと思います。どういう論調かよく知りませんが、たぶん現代文明の中で精神は追…

「僕がコミニスムに感ずる唯一の不満はそれが余りに健康であるといふことだ。理論が既に破れ、実践が尚存続するといふことはその健康さを証明する。僕がマルクスに驚愕したところは、それが精神の真新しい次元を要求するかに感ぜられたことだ。あの偉大な聖書も僕を深化に導いたが、決して新しい次元に導くことはなかった。」(原理の照明)

これはどういうことが言いたいのかというと、コミニスムつまりマルクス主義というものは教条主義的だということだと思います。教条主義というのはマルクスの文献というものが教条つまり聖書みたいになっていて、それを信仰しているだけだということです。そ…