2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

明瞭にここに貧窮した階級が存在し、一方に富める階級が存在する。あらゆる生産は富める階級に対して行はれる傾向にある。この傾向は貧窮を益々貧窮化せしめる。これは事実の問題であつて理論の問題ではない。(原理の照明)

事実の問題で理論の問題ではないというのは、いい悪いを言う以前に、貧富の格差とその格差の拡大が疑い得ない現実としてあるということだと思います。この格差の拡大の予想はマルクスの資本制社会の予想に基づいているのでしょう。しかしこの予想は外れます…

心理の諸映像を論理に写像すること。これが僕の現在の主題だ。思考を鍛化する操作だ。(原理の照明)

こうした独特の言い回しは化学者としての思考方法からきているんじゃないかと思います。俗っぽくいえば論理を組み立てるときに心情とか感覚とか気分というようなものを論理に組み込むということを言っているのだと思います。実感とは本音というようなものを…

精神の体操は僕を爽快(そうかい)にしたことはなかつた。かへつて衰弱の感覚を与へたのだ。すると僕は精神が肉体のやうな現実性を獲取するまで、それを鍛へるより外仕方がないのかも知れないと思ふ。(忘却の価値について)

精神の体操というのは要するに「考えること」を指していると思います。なんで体操なんていう言い方をするかというと、考えるという作業自体を考えると、考えるとか論理を追うということにはいくつかのパターンがあるために、そのパターンに沿った体操をして…

この世では仕事より高級なことも、仕事より低級なことも、そして複雑ささへ、それ以上でも以下でもないのだから。(夕ぐれと夜との独白)

ここで言う仕事とは給料をもらう職業という意味よりももっと広い意味を含んでいます。まず最初に何もしたくない、何をしていいかわからない、何をしても虚しいというニヒリズムに捉えられたようなひきこもりの時間があり、いうにいわれない内面の格闘の結果…