2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

春の嵐だ。窓の内側で何が愉しかつたらう。窓の外で風と雨がつのつてゐる。僕は待たうとした。期待のうちにかけられた運命は素速い速度でふるえてゐる。そして僕は何を不安のなかから追出すことが出来たらうか。僕の望んでゐた通り精神は飛翔をやめてしまつた。僕はじつとしてゐる。(夕ぐれと夜との独白)

こういう文章はなにかの模倣なんだと思いますが、なんの模倣だかわかりません。リルケとかかな。国籍不明ですよねイメージが。ヨーロッパの古い町っぽいところで若者が窓の内側で物思いに沈んでいるみたいな。しかし吉本は佃島出身のこてこての下町っ子。だ…

風は柔らかになつた。僕の心は険しいままくるまれてゐる。柔らかいもので。(夕ぐれと夜との独白)

ほんとうに晩年のよろよろした爺さんになった吉本の写真で見たんですが、吉本の自宅の書斎で山のような書物に囲まれてお爺さんの吉本がいるんですが、目の前の壁に大きな綺麗な外人女性のポスターが飾られていたんですよ。たぶん吉本が惹きつけられた写真な…

自覚における自己写像は任意的である。つまり任意的なものだけが自己形成に関与する。人間の自由とは原理的に(つまり抽象的に)語られる限り、この自己写像の任意性といふことに帰着する。(形而上学ニツイテノNOTE)

これは昔読んでよく分からなかった箇所ですが、今読んでも分からないですね。自己写像っていう概念が分からないわけですよ。人間はたえず心も体も動いていますよね。絶え間なく何らかの活動状態にあるわけで、そのすべてを把握することはできません。絶え間…

現実は人為的に(意識的に)、又は必然的に(無意識的に)歪められてゐる。(形而上学ニツイテノNOTE)

これはマルクス主義的な考えから出ている言葉のようですね。現実の歪みというのは資本主義社会の歪みというようなものを指しているのだと思います。吉本が優秀だなと思うのは、制度の歪みを革命で改めようというだけでなく、現実の無意識の歪みというものを…