衰弱した精神にとつては休息が必要なのだ。それなのに僕はいつも酷使してゐる。すると増々肉体と精神とが不均衡になつてゆくのが判る。脳髄は敏感に衰弱し肉体はしこりのやうに悩む。僕は増々自分を窮地に追ひ込んでゆくようだ。(忘却の価値について)

まあ二十代の青年の吉本にこういうことを言われてもね・・・60歳を超えちゃうと、肉体が精神のセンサーだということがよくわかる。歯が抜ける、耳が遠くなる、目が衰える、そういったことは世界への通路が詰まっちゃうことなんですよ。しかし人の心身は不思議なもので、直接的な感覚の衰えはべつの何かを目覚めさせますね。それがいわゆる呆けと呼ばれるものだとしても、それもまた人の心身の領域なんだと思います。それを面白いと思えないと老人介護の世界は同情の世界に過ぎなくなりますね。



おまけ

ありません。