2015-04-11から1日間の記事一覧

風は今日、冷たい。雲のありさまも乱れてゐる。僕は少年の時、こんな日何をしてゐただらう。街の片隅で僕ははつきりと幼い孤独を思ひ起すことが出来る。執念のある世界のやうに少年たちの間では事件があつた。その中で身を処すときの苦痛は、今と少しも変つたものではなかつた。(〈春の嵐〉)

吉本は幼年期とか少年期の記憶を何度も掘り返し、そこから思想の糧を引き出してくる思想家です。ふりかえって私たちはどうでしょう。私は自分のあまりぱっとしたものではなかった幼少年期を繰り返し思い出すということは少ないです。それってなんかきついん…

春の嵐。僕は何も象徴することは出来ないが、その苦痛だけは知つてゐる。(〈春の嵐〉)

「春の嵐」というのは思春期のことを言っているんだと思います。思春期に少年から大人に変わる〜という徳永英明の歌のような時期ですね。体が性にめざめるから「嵐」っていうわけですね。小中高の学生のころでしょう。吉本の少年期は、次のおまけに引用した…