2010-04-25から1日間の記事一覧

僕の精神からは希望が消失した。僕はいま無限の単調のうちにある。そして僕が自ら血肉化し得たのは衝動(感情)を知性によつて抑へること。いやむしろ虚無によつて抑圧することであつた。この感覚は言はば論理の錘(おもり)を沈めるようなものであつた。(原理の証明)

なぜ希望が消失した、と言っているかというと、敗戦によってそれまで信じていた軍国主義の思想が完全に破産したのを見たからです。そして戦後になって民主主義や社会主義を提唱しはじめた人たちの主張のなかに、吉本たちが戦争を体験して味わった絶望が充分…

僕は神の問題から逃れ得た(やうに思ふ)。言いかへれば僕にとつてそれは情感の問題から逃れたことを意味する。何故ならば、僕はスコラ哲学の教祖たちのやうに、理性と神とを一致させることには与(くみ・賛成して仲間になるの意)しなかつたから。(原理の証明)

吉本にとっての神という問題は、いつかは戦争によって死ぬと信じられた自分の宿命に対して、絶対者として解答してくれる存在だったと思います。俺は戦争でどうせ死ぬ。若くして戦争で命を失うのはなんのためか。なんのためと思えば命と引き換えにできるのか…