「社会は最早、無数の秩序ない抑圧の集積だ。居場所を喪った僕の魂は遥かな地下を歩いてゐる」(形而上学ニツイテノNOTE)

世の中はムカつくことだらけ。もう引きこもるしか魂を守る手がねーよ。現代訳すればそんな感じでしょう。おまけです。田原先生は照れくさいかもしれないけど、吉本が田原先生の著作「初期・性格と心の世界」に対して贈った言葉です。たしかいわゆる本の腰巻に書かれていたと思います。ポルソナーレで勉強した人なら分かるでしょう。この短い文章の度外れた対象把握の見事さが。こういうまっしぐらに心臓をつかむような文章が書ける人なんだよな吉本隆明は。素晴らしいよホント。吉本さんのようにホントのことしか言えない人に、こうして正面から評価されたらさぞうれしいだろうと思います。これは私がポルソナーレで勉強しようと思ったきっかけの一文でもあります。


田原克拓「初期・性格と心の世界」           吉本隆明 


この本は、著者たちのあくことのないカウンセリングの経験の力が、母親や父親の子供たちへの重大な影響力に匹敵するところまで到達していることを、はっきりと示している。小学生の低学年では母親の直接の手触りが、高学年になると父親の正しい距離の手が、子供たちの性格を大人の世界へ開いてゆく。著者たちのこの卓見に導かれて大人への入口に佇った中学生や高校生は、自分で自分を考えすぎたり、他人の目でおびやかしたりする性格の異常や病態から、父母と一緒に脱出する方法を、ひとりでに見つけ出している。