2008-04-08から1日間の記事一覧

「併(けれど)も、不幸の解決は正しく僕のみにとっての解決であり、僕のみの喜びである。そしてこれは、他の喜びに転化するを得ないものだ。ここに不幸といふものの特質があると思はれる」(不幸の形而上学的註)

最初から吉本隆明の詩を読んでいただきます。「異数の世界へおりてゆく」 吉本隆明異数の世界へおりてゆく かれは名残り をしげである のこされた世界の少女と ささいな生活の秘密をわかちあはなかつたこと なほ欲望のひとかけらが ゆたかなパンの香りや 他…

「それ故、不幸は嘆かるべきでなく、掘り下げるに値するのみである」(不幸の形而上学的註)

これは前の文章で書いてしまったこととだぶります ( ̄~ ̄;) 個の世界とは何でしょう。私にもよく分からない。人間は母親の胎内から生まれ、母親に包摂され、交流することが生の始まりにあります。これは誰もがそうですよね。 人は一人で生まれ、一人で死ぬ…

「僕らは、精神のはたらきを倫理のうちにはたらかせるとき、如何に生きるべきか、といふことを解きつつあるのだといへる。ここでいふ倫理とは決して、道徳律をさすものではない。ほんたうに深くされた精神は、わけても正義や道徳の匂ひをきらふものである」(断想Ⅲ)

ではまず一曲。「廃人の歌」 吉本隆明ぼくのこころは板のうへで晩餐をとるのがむつかしい 夕ぐれ時の街で ぼくの考えてゐることが何であるかを知るために 全世界は休止せよ ぼくの休暇はもう数刻でをはる ぼくはそれを考へてゐる 明日は不眠のまま労働にでか…

「我々は、ひとつの設けられた陥落にたいしては、いつも開かれた精神でむかふことが必要である。何故かといふと、閉じられた精神は、陥落におちこむと、自らを枯らさうとする自己運動をするからである」(断想Ⅲ)

陥落と言っているのはありふれたことでいいわけです。夫婦がうまくいかない。恋人とうまくいかない。職場で上司とうまくいかない。職を負われて仕事がない。家族の介護で疲れ果てた。それが陥落です。 開かれた精神とは、その自分だけを襲ってきた、自分だけ…