正しく驚くべき泥濘の道がある。それは僕らの占有せられた現実だ。僕の精神は占有せられることを耻とする。限りなく倦まざらんがために。(原理の照明)

支配秩序と支配秩序に飼いならされた感性の秩序が占有せられた現実です。政治を支配し金融を支配し経済を支配し、テレビや新聞を通じて感性の秩序を飼いならす。そして私たちの内面も占有されていく。それは恥だと吉本は言っているわけです。生きることが限りない倦怠でないために、自分を現実から区別しなくてはならないということです。

おまけです。
「四季派の本質」より         吉本隆明

戦争期の支配体制と「四季」派の感性のなかに、このような固定した伝統意識の照応があるかぎり、初期においてまったく現実社会の動向とは無関係なところに、詩的な世界をきずきあげてきたというような「四季」派の外観的な特長などは、何ものを意味するものではなかった。かれらの社会的無関心は、たちまち、おそるべき戦争謳歌に密通することが可能であった。