〈死はいつも内側から忍び込んで来るのですからね。だから僕らはふり返へらなければいいのだ。いつも厳しいところにゐればよいのだ。〉(〈少年と少女へのノート〉)

うつ状態に閉じ込められた人と話していて気がつくのは、すべてが過去だということです。もう取り返しがつかないという悔しさと恐ろしさと怒りが心のすべてを占めています。人のせいにして攻撃しては、攻撃する自分の弱さに傷ついてまたうつを深めます。どこかに未来を開かないと心がちっそくして死んでしまう。しかし未来は観念として開かないとどこにも開きようがない。誰にも救いようがない。自分がなんとか考えとして、未来の方向を考えとして切り開くしかない。与えられるものではなく、自分で間違っているかもしれなくても手づくりで切り開く明日の方向というもの。吉本はそういうことをいっているように私には思えます。

おまけです。

子供が何をやろうと、たとえ犯罪者になろうと、オウムに入って出家したいって言おうと「やってみな」というだけでね。「挫折したりイヤになったりしたら、まあ、戻ってくればいいよ」って。そういうことなら、やや、僕はできる。
                吉本隆明 「悪人正機」より