〈出来るだけ易しい言葉を用ひること。〉(断想Ⅲ)

「できるだけやさしい言葉を用いること」というのは、吉本がひそかに苦闘した大きな課題だったと思います。そこ奥には、吉本が人と、特に女性とコミュニケーションが取りにくいという生涯の体験があったと思います。そんな吉本家に吉本以外は女性と猫しかいなかったというのはなんか笑えます。吉本さんにはなんともいえない良さがあり、それがわからない奴は嫌いです。

おまけです。
「僕の『心的現象論』とモチーフが全く違うのは、僕は文芸批評の基礎部分としてやっていて、べつに心的な治療に関与しようとは思わなかったし、今も思っていないんです。「お前のを読んでも、治療にはちっとも役立たない」と言われればとの通りで、治療的な意味は少しもないと思ってやってきました。でも関連づけはできると思います」
          「思想の機軸とわが軌跡」吉本隆明(2015文化科学研究院出版局)