〈おまへは自分を信ずるのだよ。あんまり痛ましい程自分がなさすぎる。〉(下町)

この「おまへ」は吉本のことでしょう。では誰が吉本に「自分がなさすぎる」と言っているのかといえば、それはこれは創作だと思いますから自分が自分に言っているといってもいいわけですが、私が想像するにはたぶん吉本の物語詩に出てくるイザベル・オト先生という人物の言葉じゃないかなと思います。吉本の「エリアンの手記と詩」という初期の物語詩は吉本の分身であるエリアンと、たぶん私塾の先生であった今氏乙治という人がモデルだったイザベル・オト先生と、たぶん私塾で吉本が好きだった少女がモデルのミリカという少女の3人が主たる登場人物なんですよ。そのオト先生が言っている感じじゃないかと思います。
吉本に自分がなさすぎるといえば、こんなに自分がある人もいないんじゃないの?といいたくなります。しかし外に出せる自分がない、わからないことと格闘していて自分を出すことができないという意味なら、そういうこともいえるかなと思いますね。

おまけ。
ありません