何れにせよ世界における最も貧しき資源の国であるといふ特殊事情への考察が基本的なものとならざるを得ない。(中世との共在)

日本が世界で最も貧しい資源の国なのかどうか知りません。
しかし天然資源も鉱物資源もほとんどないかもしれません。かっては石炭は採れたけど、もうそういう時代ではないし。だから資源は輸入に頼り、それを加工する技術を磨いて経済大国になったんでしょうね。かってはね。日本の町工場から大企業までの技術屋さんたちはやっぱりスゴイということになりましょう。
吉本も化学技術の技術屋さんであったわけです。吉本の人生の半分は化学技術者としての知識や修練にあったわけですが、それは著作からはなかなか瞥見できません。ただ最期の声明といえる原発事故の時の発言に、化学の技術者としての蓄積と見識がこめられていたことを感じました。下記のおまけをお読みください。吉本の反「反原発」の発言を肯定することは今の出版界では村八分をくらうことを意味しています。それが多くの言論人たちが吉本の発言から遠ざかった理由です。こういう情けなさは今に始まったことではないし、そこを正面突破して言いたいことを言う自由を職業的に通すには、吉本がそうであったように何があっても読者がついてくるような単独の実力を示すしかないわけです。がんばれ副島隆彦、あなたが吉本の思想を受け継ぐかどうかはわからないが、吉本が貫いた物書きとしての厳しい姿勢を受け継いでいることは一読者として私は認めます。

おまけです。
「反原発異論」(2015論創社)の前書き「悲劇の革命家 吉本隆明の最後の闘い」(文:副島隆彦)より

吉本隆明は、事故のあとの五月二十七日の毎日新聞のインタビュー記事で次のように答えている。
 
「福島の土地に多くの放射性物質が降り注ぎました。二万人以上もの人々が住んでいた場所から避難していますが」と問うと、吉本さんは「ひどい事故で、もう核エネルギーはダメだという考えは広がるかもしれない。専門ではない人が怒るのはごもっともだが……」と理解を示しつつも、ゆっくり続けた。「動物にない人間だけの特性は前へ前へと発達すること。技術や頭脳は高度になることはあっても、元に戻ったり、退歩することはあり得ない。原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう。今のところ、事故を防ぐ技術を発達させるしかないと思います」

この吉本隆明の発言は正しい。絶対的に正しい。かつ優れている。日本一かつ世界一優
れている。「原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう。今のところ、事故を防ぐ技術を発達させるしかないと思います」という吉本の〝状況への発言〟はズバ抜けて優れていた。これが日本の最高の頭脳であり民衆の中の革命家であり思想家である吉本隆明の文字どおり最期の闘いであった。このあと一年弱で吉本は、八十七歳で逝ってしまった。