危機とは僕にとつて且てすぎてきたところのものだ。僕は死のうちに生の仮面をつけてゐるだけだから。僕はもう誰のためにも笑はない。みんな喪してきた。(〈夕ぐれと夜との言葉〉)

まあそう言わずにいっぱい呑もうよ吉本くん。きみは本当はオレより年長で、しかももう亡くなっているんだけど、ここでの君はオレより30年くらい若いんだ。君がオレより賢くてすげえ男だということはよく知っている。でもさ、もうおしまいみたいなことを言ってるけど、きみは生きていくし、きみにしかできない仕事がマッターホルンみたいに聳え立っているんだ。それがきみを燃え立たせて生きさせる。だからいまはおいしいものを食べて呑んで、あぐらをかいて待つことも覚えようよ。

おまけです。

悪人正機」(2001)より         吉本隆明
それに、子供を産むっていうことは、男と女が仲よくして一緒に住んでいれば本能のあげく、と言えるのかもしれませんが、
子供を育てる育てないっていうのは、
本能の問題じゃないような気がします。