精神にとつて存在がひとつの終点である。(断層Ⅳ)

存在というのは自分自身がいまここにいるという自己の身体を自己が把握することだと思います。それだけは疑うことができないし、そこが揺れ動くとすればそこが深刻な精神の病の根底になる。それは後に心的現象論となる吉本の思想的な発想の始まりだと思います。

おまけです。
「思想を初源と根底とから否定する」より   吉本隆明

もしニーチェのアンチクリストが自身に対する誇大妄想として病気なのだといえるのなら、この病像は深く遠い無意識の核に秘められたものだ。この無意識の核にある「否定」の領域にまで、西欧の文明の歴史を閉じこめたうえで、ニーチェのアンチクリストはさまざまな倫理を暴き出している。病んだ無意識の母胎に病んだ文明を入れて、わたしたちに病像と病像とが角逐するドラマをみせてくれている。