あらゆる選択のうちで死は、最も確実であり、誰もがそれをとつておきのものとします。(〈少年と少女へのノート〉)

死に誘われ、たえず死にたいと考える。そういう人はたしかにいます。なぜ限られた人生を自然に迎える死を待たずに、死に誘われるんでしょうか。そして死から逃れ、生きようと思うにはどうしたらいいのでしょうか。私はその自分なりの答えをもっています。しかしそれは私もそれをもっと生きてみないとその答えが正しいのかどうかわからない。生きてやってみないとわからないことはあります。わからないことは言いたくない気持ちがあります。しかし誘いかける死と戦いたいというのが自分が考えること生きることのおおきなモチーフです。

おまけです。
「ぼくは、ふつうに生きている人、あるいはそういう生き方をすでにやっている人の生き方が、いちばん価値ある生き方だと、理想としています。何かのデザインを描いたり、染織物をしたりして、一日終わる。日常いつでもありふれたことなんですけど、そういうことで一日を送っているような人がテレビなんかに出てくると、これは偉い人だよ、大したもんだよと思って、おれも真似したいもんだなと思うわけです」
             講演「ふつうに生きるということ」(2003)より  吉本隆明