2015-08-08から1日間の記事一覧

聴きたまへ。貧しい僕の仲間たち。だが並外れた期待は禁じられてゐる。地上に存在するすべてのものは僕たちのために存在するのではなくて、僕たちがすべての存在のために存在してゐるだけだから……。(夕ぐれと夜との独白(一九五○年Ⅰ))

こういう「聴きたまえ」みたいな口調はヨーロッパの文学の翻訳文の模倣でしょう。若き吉本にもヨーロッパの文化へのあこがれや陶酔があったのだと思います。それは吉本のナルシチズムでもあるんだと思います。しかしそういうナルシチズムは現実意識と反省意…

すべての美や真実や正義を、神へ、それから権威へ、それから卑しい帝王へ与へてきた人類。空しくそれを習慣や儀式のなかに、保存してきたひと達。神権と王権との結合。(夕ぐれと夜との独白(一九五○年Ⅰ))

ここで翻訳口調でちょっと陶酔しながら吉本が言っているのは、日本の天皇制のことです。天皇制であろうが王政であろうが教祖様であろうが、それがおかしいというのはわかっている。しかしそれがなぜ強固な信者によって守られているのか、なぜそれが成立し、…