2015-03-16から1日間の記事一覧

われわれは時代の不幸を時代にかへさなければならない。現代における人間精神の社会性は正しくこの使命を負つてゐる。且て個我の受けた傷手のうち、自我の負ふべきでなかつたものが如何に多くあつたか。(断想Ⅳ)

自分のこころというものを、ひとかたまりのものとしか思えないならば、つらいことが起こると自分を責めるしかないわけです。あるいは自分がただ耐えるしかない。ひとかたまりだと思えば、外側の世界とひとかたまりの自分しかないんだから、つらい状態は世界…

現代における人間の生存は、何も結果を生まない。且て自らの自我が産み出すものを信じて、それに殉じた無数の芸術家たち。その幸せな時代は過ぎ去つてかへらない。今日では自我はそれをとりまく環境のやうに稀薄だ。そしてまるで商品のやうに均一な精神の生産物を生み出すにすぎない。(断想Ⅳ)

吉本がこのノートを書いてから65年くらい経つわけですが、環境のように希薄だと書いた自我の問題はもっともっと進展したといえます。かんたんに言えば誰もかれもが同じような生活をするようになったということです。すると誰もかれもの無意識も似通ってくる…