2015-02-16から1日間の記事一覧

〈人々がやつとの思ひで手に入れた自由は屢々誇りを持つた人間にとつては、何とも我慢の成らないやうな奴隷状態に、云ひかへれば愚昩にして残虐な愚民群の支配に転化したのであつた。(ランケ)〉このランケの口振り。我慢のならない出来具合である。こんなことを言つたとてそれが人間の幸福に何を加へるといふのか。(エリアンの感想の断片)

これは要するに「愚民政治」という言葉がありますが、一般の民衆に権力を持たせると「愚昧にして残虐な」支配を行ってしまうというランケの考察に吉本が反発しているのだと思います。ランケのいうことを普遍化すれば結局一般大衆というものが愚昧にして残虐…

僕は少数者の支配による圧政に抗して生起した大革命を、暴徒を信ずる。その動機の現実性を信ずる。誰が結果のために行動するだらうか。実践はいつも動機だけに関与される。そして人間史は、ランケの言ふやうに又ヘーゲルのいふように理念なるものによつて動かされたのではない。それは無数の動機の、しかも悲哀ある動機の連続である。(エリアンの感想の断片)

その動機の現実性を信じるという言葉が心を撃ちます。一般大衆の現実というところを信じるということです。そしてやってみなければわからない実践というものの現実性を指摘していると思います。では大衆の現実というものは理念の眼から視えるのか。視えてい…