2014-11-08から1日間の記事一覧

僕が僕の欲することを実現し得ないといふことは全く客観的な条件にかかつてゐる。先づ抑圧は現実そのもののうちにあり、次に精神のうちにある。(断想Ⅳ)

これは吉本が敗戦後に出会ったマルクスの著作の影響があらわれているんだと思います。平凡で狭い生活圏での生活、つまりあなたや私の生活のなかでのいろいろな悩みや不安は、あなたや私の狭い生活圏のなかにのみ原因があるのではなく、広い社会の現実のなか…

体得はいつも少しく遅れて僕に到着する。だから僕は所詮啓示の感覚を覚えたことはない。(断想Ⅳ)

啓示とか天から降ってくるインスピレーションというのは、詩人が作品を書くにあたってよく用いる形容です。吉本はそんなものは信じないといっているわけです。社会現実があって、それが個人の内面に与えるものがあって、それが繰り返されて体得という自覚に…