2014-08-23から1日間の記事一覧

現代の現実が何故に倫理的構造を持つに至つたのかといふことを厳密に考察することは極めて困難であるが、ぼくは次のやうな箇条がこれの解決のために挙げられねばならないと考へてゐる。①一つの原因の周辺に無数の原因が集積するといふ近代社会機構の特質が、現実を二つの極に集中せしめようとしてゐる。この現実の分極といふことは、人間精神の倫理的形成に同型である。換言すればかかる現実の構造は倫理性を喚起せしめるものである。②現代において人間の生存といふ課題が重要な条件として生起してゐる。生存は生存からの上昇または下降として考察

このノートの部分(箴言Ⅱ)は1950年〜1952年ころに書かれているそうです。吉本は1950年に何をしていたかというと、大学を卒業して2、3の町工場に就職しますが、労働組合運動で職場を追われて、母校の東京工大の研究室に戻ります。1952年には東洋インキ青砥…

われわれは精神に無数の問ひを用意してゐるが、解答の方法はいつもただひとつだ。(断想Ⅲ)

解答の方法はいつもただひとつだというのは、おそらく「考えること」だということじゃないっでしょうか。考えることの深みに入れば人の行動はとまってしまう。ごろごろしてぼーっとしているようにしかはたからは見えないときに、ひとは考えに考えているかも…