2014-03-08から1日間の記事一覧

●それにもかかわらず、ある個人の未成熟な経路が、時間的な順列にしたがつていくらか公的な性格を帯びてよみがえるとすれば、そのかげに、言語に尽しがたいほどの愛惜の努力がかくされているとかんがえられる(過去についての自註)

この文章は吉本隆明の初期ノートのなかの「過去についての自註」という文章の冒頭部分にあたります。この文章には前段があって「あるひとつの思想的な経路は、それを「個」としてみるとき、あるひとつの生涯の生活を「個」としてみるのとおなじように、それ…

こういつた愛惜のまえでは、思想の巨きさと小ささとは価値をはかる尺度となえない。かれは、だれが何と言おうと、ひとつの取るにたらぬ個人の、未成熟な時代の作品をよみがえらせるために、どこかでそれを愛惜したのである(過去についての自註)

吉本はどこかで(作家についての自分なりのランキングがあって、そのランキングの基準は作品の出来ではなく、その作家が作品を作らざるをえない必然性です)という意味のことを書いていました。作家には作品を作る契機というものがあり、また作品を公表する…