2013-09-14から1日間の記事一覧

もし、わたしに思想の方法があるとすれば、世のイデオローグたちが、体験的思想を捨てたり、秘匿したりすることで現実的「立場」を得たと信じているのにたいし、わたしが、それを捨てずに包括してきた、ということのなかにある。それは、必然的に世のイデオローグたちの思想的投機と、わたしの思想的寄与とを、あるばあいには無限遠点に遠ざけ、あるばあいには至近距離にちかづける。(過去についての自註)

この文章は具体的にいえば、たとえば戦争中に軍国少年として戦争を徹底的にやるべきだと信じていた過去の吉本自身というものを捨てたり隠したりしないということです。戦争に敗けて戦争中のイデオロギーは悪い軍部が国民を支配するために振り撒いたものだと…

かれらは、「立場」によつて揺れうごき、わたしは、現実によつてのみ揺れうごく。わたしが、とにかく無二の時代的な思想の根拠をじぶんのなかに感ずるとき、かれらは、死滅した「立場」の名にかわる。かれらがその「立場」を強調するとき、わたしは単独者に視える。しかし、勿論、わたしのほうが無形の組織者であり、無形の多数派であり、確乎たる「現実」そのものである。(過去についての自註)

この文章は若いころ読んだのですが、まだよく覚えています。これは吉本の社会思想の核心を余すところなく述べているとおもいます。とくに「無形の組織者であり、無形の多数派であり、確乎たる「現実」そのものである」という断言の迫力は無類の凝縮力をもっ…