2013-08-24から1日間の記事一覧

体験の対自的な思想化ということは、とくに日本のばあい不可避であり、不可欠であるといえる。このような構造をあたええない、どんな普遍的な「立場」も、すくなくともわが国では、永久に不発におわるだろうと断定することができる。(過去についての自註)

この文章は吉本が自らの思想を築く実践的な支柱のようなもので、この柱の上に様々な思想的な仕事が広がっています。まず自らの体験があり、それを論理によってほじくり返す。徹底した論理性を体験に与えることによって、自らの体験を普遍化し抽象化していく…

しかし、この思想化が、一種のスコラ主義や停滞におちいつたとき、その作業といつでも訣れうるものでなければならない。思想が現実と逆立する契機は、いつも、どこにでも転つているようなものである。すなわち、わたしたちはいつも「立場」主義者とおなじ危険に、裏側から対面しているのである。(過去についての自註)

ここで「立場」主義者と呼んでいるのは、いわば教条主義のことで具体的には左翼政党(共産党とか社会党)を指しているのだと思います。マルクスやレーニンの言説を教典として信仰に近い無批判な忠誠を示すならそれは教条主義です。それに対して自らの体験を…