2013-08-10から1日間の記事一覧

わたしたちの思想は、坐して大勢力の出現を夢みることはできないし、救世主をどこかに求めることはできない。不滅の思想的な根拠から、どのような勢力の消長にもくじけない思想としての拠点を構成する宿命を担つている。わたしたちは、何ものをも、勢力としては頼まないのであり、これを了解するものを受入れるが、これを拒絶するものを立去るにまかせ、それを追おうとも引きとめようともしないだけである。(過去についての自註)

こうした文章や、もう一つの「ゼミ・イメージ切り替え法」のほうの文章は学生の頃初めて吉本の本に出会った私に世界というものの考え方の基本を教えてくれたものです。とてもよく考え抜かれた世界についての考え方の基本。それは他の誰からも教えてもらえな…

ある現実的な体験は、体験として固執するかぎり、どのような普遍性をももたないし、どのような歴史的教訓をも含まない。ただ、かれの「個」にとつて必然的な意味をもつだけである。この体験の即自性を、ひとつの対自性に転化できない思想は、ただ、おれは「戦争が嫌いだ」とか、「平和が好きだ」という情念を語つているだけで、どんな力をももちえないものである。(過去についての自註)

体験から思想は生まれる。しかし体験を思想として練り上げることをしないから、ただ体験につきまとう情念をもちうるだけだ。そして情念は年月のなかで風化してしまう。逆にいえば、どんなに卑小な閉ざされたアンタが思っているように取るに足らないような経…