2013-06-08から1日間の記事一覧

彼(宮沢賢治)が童話と言ふものに生命を打ち込んだ理由は実に明らかであると思ひます 斯様にして創られた彼の作品に於て私達が忘れてはならない事がたつた一つあります それは彼の作品には「生命の悲しみ」とも言ふべき一つの悲哀を帯びた調子が一貫して流れてゐる事なのです (宮沢賢治童話論)

吉本にとって宮沢賢治は大きな存在で、正面からぶつかった宮沢賢治論は膨大なテーマを追求しています。その全体はとてもここで書ききれないわけですが、このノートの部分に触れるようなところを少し解説してみます。「悲劇の解読」(1979筑摩書房)のな…

それは実に大きな悲しみであり、私達の魂を奥底からゆさぶつてさらひ去つて行くやうなものなのです 何か自然の悲しみと言ひませうか、山川草木の悲しみと言ひませうか、その様な確かに宇宙の創造的な意志に付きまとふやうな本質的なものなのです (宮沢賢治童話論)

その悲しみはひとつには魂の奥底からゆさぶるようなものだということであり、もうひとつはそれが「わけがわからないところにわけのわからいことろ自体としてある」ということなんだと思います。つまり二重になった悲しみです。そこで吉本は少なくともわけが…