2013-05-25から1日間の記事一覧

さて私はその童話の本質を今「夢」であると考へやうと思います そしてその考へを押拡げて見やうと試みます 夢と言ふものが子供の生活でどんなに大きな部分であるかは申すまでもありません 一つの遊戯や考へはみんなその夢を現はさうとしてゐる努力であります 子供達は或一つの夢を作り出した瞬間からもうその夢にのつて、それからその次の夢にまで駆けて行くのです(宮沢賢治童話論 一、序論)

吉本は宮沢賢治が大好きなんだと思います。吉本が傾倒した同時代の文学者というと高村光太郎や太宰治や横光利一などがいるわけですが、その中でも宮沢賢治への傾倒の仕方は格別だという感じがします。それはたぶん資質というところで最も似ているというか、…

又子供達の夢が実際にその手でもつて行はれた場合を考えて見ます 残念なことには子供達には経験とか知識とか言ふものがどうしても不足なのです そして子供達はその夢を空しく放棄してしまふより他に仕方がないのです これで子供達の夢の限界が或る一定のところより以上に発達し得ないことは明らかであらうと思ひます 今私は童話と言ふものがこの子供達の夢を充分に拡げるに役立つものであると思ふのです(宮沢賢治童話論 一、序論)

現在の社会で倫理として通用しているヒューマニズムのような倫理の形がどうしても白々しく感じられるという段階が到来していると感じられます。しかしそれに代わる新しい倫理というものが視えてこない。その新しい倫理のあり方というのは、吉本がずっと考え…