2013-05-11から1日間の記事一覧

数々の夢から分裂する悔恨を僕はとうの昔、忘れはてたと信じてゐる。精神は抒情の秩序を失なつてしまつたから。僕が夕ぐれ語り得ることは嬰児の如き単調なレポートだけなのだ(〈夕ぐれと夜との言葉〉)

この初期ノートは1950年頃に書かれているようなので、つまり敗戦直後の混乱期にいる吉本が書いているわけです。吉本は「精神は抒情の秩序を失ってしまった」と書いています。戦争に敗北し、天皇が人間宣言をし、軍人たちが戦犯として処刑され、進駐軍が…

すると自由といふものはあの長い長い忍耐のうちにしかない。この忍耐はしばしば生きることに疑惑を感じさせる原因となる。(〈少年と少女へのノート〉)

自由というものは長い長い忍耐のうちにしかない、ということを吉本は後年、自由ではなく「自立」という概念にしたといえると思います。長い長い忍耐をして、気がつけば白髪のおじいさんということになります。それじゃ生きることに疑惑を感じるのも無理はな…