2013-03-09から1日間の記事一覧

芸術の精神をあらゆる他の精神から区別する唯ひとつの要素は、それが人間をして彼自身の価値を放棄せしめるといふことである。(断想Ⅳ)

なんだか難しい言い方をしていますが、私なりの平ったい言い方で解釈すると芸術というのは植えつけられた価値観を疑う、ということをどうしても伴うということじゃないかと思います。世間に流通している価値の秩序というものがあります。知識のあるほうが無…

現代においてわれわれから寂寥を奪つてゐるものは事象の高い速度である。それ故われわれは既に受動的な寂寥を失つたと言つてよい。われわれの寂寥は世界に対する能動的な寂寥である。われわれの精神は今や包むもの(世界)としてしか存在し得ない。(〈寂寥についての註〉)

1980年代に入ってから吉本は「マス・イメージ論」を書き、高度資本主義とか超資本主義というべき現在の社会の解明に力を注ぐようになりました。その一連の考察のなかでこの文章にも出てくる「速度」の問題を取り上げています。社会的な速度、時間の流れ…