2012-07-13から1日間の記事一覧

一つの決定的な宿命といふものが、如何にして一つの可能性をあらはすかと言へば、それが多様な構造によつて支へられてゐるからである。この構造の多様性といふものは僕らの否定といふもののもたらす効果とも言ふべきものであつて、僕らが離脱しようとする意志によつて生成せしめてゐる。(断想Ⅱ)

言葉使いが難しくて分かりにくいですね。そこで宿命という言葉を必然性という言葉に置き換えてみます。ある個人の生き方のなかに他にどんな道も辿ることができなかったという必然の道筋があるとすると、その必然の道筋というものはその人の内面と外部の現実…

精神の集中の周囲には必ずひとつの真空がある。我々はこの真空を個性と考へる。そこで個性といふのは、よく考へられるように個人が所有する特性ではなくて、個人の所有する場である。(〈虚無について〉)

吉本が「母型論」を書くことで推し進めたい思想の夢は、吉本の言葉でいえば人類の歴史をお猿さんの段階からぶっとおすことです。ぶっとおすというのは一貫した理解を人類史の始まりから現在にまで貫きたいということです。若き日に吉本が直感した個の精神が…