2010-08-14から1日間の記事一覧

倫理とは言はば存在することのなかにある核の如きものである。願望とか、愛とか、美とか、要するに人間性の現実化に伴ふ、精神作用の収斂点に存在するあるものである。ここであるものと呼ぶのは、それが人間の存在と共にあり、しかも規定され得ない、しかも(しかるが故に)人間の存在を除外するのでなくては、除外されないものであるからである。それは言ひかへれば人間の存在が喚起する核である。(形而上学ニツイテノNOTE)

吉本にとっての倫理という概念は独特です。普通倫理というと道徳的なことを意味するでしょう。道徳とは社会的な行動における善悪を指すわけです。しかし吉本にとっての倫理とは善悪自体ではなく、善悪という価値観が生じる人間の精神の必然性を指していると…

人間が存在し、しかもこの核が存在自体と衝突する状態、これは虚無と呼ばれる。それ故虚無はポジティヴな意味でも規定することが出来る。これは後に論じられよう。倫理はそれ故何ら道徳的なものを意味しない。道徳的なものを倫理的と呼ぶのは悪しき俗化と言ふことが出来る。(形而上学ニツイテノNOTE)

核が存在自体と衝突する状態、という言い方はわかりにくいですが、たとえばあることが正しいとか正しくないとか言われているなかで、そもそも正しいとか善悪という価値を生み出すものは何かというような問題意識を抱くとします。するとここで言うような核、…