2010-07-10から1日間の記事一覧

夢は破れる。あたかも一角からくづれてゆく意識なのだが、くづれてゆく部分ごとに悔恨に変じていつた。(夕ぐれと夜との独白)

この文章からはどんな夢がどのように破れたかは分かりませんが、いずれにせよ痛切な体験によって起こった自分の心の推移を、化学実験の報告文のような観察力で書くところに吉本の特長があらわれていると思います。痛切さという血の通ったものと、普遍性に至…

死はこれを精神と肉体とにわけることは出来ない。それは自覚の普遍的な終局であるのだから。僕がそれに何かを加へることが出来るとするならば、すべてのひとにとつてそれが無であるとき、僕にとつてそれが自然であると考へられるといふことだけだらう。(夕ぐれと夜との独白)

自然という概念に人類史のすべてを叩き込み還元してしまおうとするマルクスの思想の徹底した姿、というのが吉本のマルクス理解の根底だと思います。それは親鸞の思想の中に吉本が見たものでもあります。それは吉本が自らの孤独な時間の中で開こうとした最も…